Beranda / 恋愛 / 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない / ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』57

Share

―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』57

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-23 16:10:52

「おー嬉しいか」

「うん」

楽しそうに笑っている赤坂さん。

私は……赤坂さんのことが、大好きだ。

好きで、好きでたまらない。

ファンという枠を超えて、こんなにも好きになっていいのだろうか。

赤坂さんのことが、大好きだ。

「なかなか連絡できなくて悪かったな」

「ううん。忙しかったんだよね」

「まあな。男は稼ぐ生き物だろ」

長い足を組んだ赤坂さん。

「あのね、アメリカに五月三日に行くことになったの」

「そっか。いよいよ、だな」

好きだと言いたい。

けれど、それはちゃんと帰って来てから言いたい。だから、今はぐっと堪える。

「なぁ。それ、つけてくれない?」

「……こ、こんな恐れ多いもの……無理。家宝にする」

「あ? 馬鹿か。つけるためにアクセサリーはあるんだっつーの」

貸せと言われて赤坂さんはネックレスを持った。

前から手を回して、抱きしめるような形でつけてくれる。けれど、なかなか終わらない。

あまりにも近い距離に耳が熱くなって、心臓が激しく動き出す。

赤坂さんの爽やかであり男っぽい匂いが鼻を刺激する。

それは、私の心を惑わすアロマのようだ。

「ま、まだ?」

冷静なふりをして質問する。

「まだ」

すごく密着していて、ドキドキする。

赤坂さんの硬い胸におでこがくっついてしまう。

だってネックレスをつけるなんて数秒で終わるのに、この体勢のままでしばらくいるのだから、鈍感な私でもわざとなんだと気がついてしまう。

「……まだ?」

「あーもう少し」

「もうちょっと付けやすく作ったら?」

「俺のプロデュースした物に文句があるって?」

「いいえ」

圧力、ハンパない。

だけど、こういうところも好き……。

やっとつけてくれた。

赤坂さんは離れて目を細めて見ている。

「似合う」

「本当?」

「世界一、似合う」

手鏡を、引き出しから出して覗き込んで見ると、キラキラと光っている。

病衣には似合わないけど、すごく嬉しくて赤坂さんに向かって微笑んだ。

「ありがとう。男の人からアクセサリーをもらうなんて、この人生でないと思ってた」

真剣な表情で私を見ている赤坂さん。

今までに見たことない男らしい顔をしている。

ますます、好きが増えていく……。

「……………あのさ、戻ってきたら大事な話があるから」

「何?」

「気になるか?」

「とっても」

「じゃあ、必ず生きて帰って来ること」

「……うん」

泣きそう。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terkait

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』58

    *移植することを報告したら、色んな人がお見舞いに来てくれた。会社の人や、朋代をはじめとする学生の仲間たち。皆、元気づけてくれるけど……寂しさもこみ上げてきた。もしかすると、もう会えないかもしれないとついつい思ってしまうのだ。朋代がお見舞いに来てくれて、他愛のない話をする。「実は来年辺り結婚しようかと思ってて」「うっそー! おめでとう」「久実、結婚式で友人代表スピーチしてくれるよね?」笑顔が消えてしまう。だけど、慌てて笑顔に戻して「もちろんだよ」と明るく言った。未来の約束が増えるたびに心が苦しい。病気じゃない人だって明日はどうなっているかわからない。けれど、皆、当たり前に生きすぎている。本当は生きることって、とても素晴らしいことなんだ。「おめかしして、結婚式行かなきゃなぁ」「久実のウエディングドレス姿もきっと可愛いと思うよ」「そうだね。手術が成功してその夢が叶ったらすごく嬉しいな」「自分の夢は強くイメージすると叶うって言うから。私もイメージしておく」朋代が励ましてくれて気持ちが少し軽くなったような気がする。

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』59

    そして、アメリカへ行く前日。赤坂さんは時間をこじ開けて会いに来てくれた。約束を必ず守ってくれる、赤坂さん。いつものように、口元をくいっと上げて笑みを浮かべている。手術が失敗したら……。臓器が私に合わなかったら……。もう日本へ帰って来ることができなかったら……。色んな不安が押し寄せてくる。「赤坂さん、今まで本当にありがとう」思わず最後の挨拶をしてしまった。「あ? 最後の別れみたいじゃん。帰って来たらいっぱい遊んでくれよ?」「…………うん」「舞も言ってたし。時間が取れたら温泉行きたいな」「赤坂さん、一緒に入ってくるから嫌」クスクス笑っている。「今度は綺麗に洗ってやるよ」「遠慮しておきます」「そんなに俺のこと嫌わないでくれ」こうやって何でもない会話をしているのが一番幸せだ。この時間がまた来ることを今は願って挑んでくるしかない。「いっぱい、いっぱい、勇気をありがとう。赤坂さん」「こちらこそ。支えてくれて感謝してる」赤坂さんは立ち上がって私の額にチュッと口づけて病室から出て行った。

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』60

    *アメリカの病院で検査を受けてドナーを待つ日々を送っていた。ドナーが現れるというのは、誰かが死を迎えるということ。複雑な思いではあったけれど、その分、心から感謝をして生きていこうと思った。「お母さん」「ん?」「もしも手術が失敗だったら……。赤坂さんにこの手紙を届けてほしい」「ええ」「引き出しに入れておくから」「わかった」私は微笑んで窓に目をやった。それから数日後、ドナーが見つかった。手術を受けることになった。『赤坂さんへ。この手紙を読んでいるということは、手術が失敗したということ。そして、私は天国へ旅立っているということになります。はじめて手紙を書いた日。赤坂さんが会いに来てくれるなんて考えてもいませんでした。小さい頃から赤坂さんは私の理想の男性で、大きくなったら赤坂さんみたいな人と結婚したいと夢を持ってしまいました。赤坂さんとは本当にいっぱい思い出があります。くだらない話をして笑いあったことまで、全てが大事な思い出です。ネックレスをプレゼントしてくれたことも本当に嬉しかった。素敵な時間をたくさんありがとうございました。私の人生で、赤坂さんを超える男性にはなかなかめぐり逢えませんでした。赤坂さんは、私にとって世界一の男性です。生きている間に恋する心を教えて下さり、本当にありがとうございました。天国からも、赤坂さんの活躍を応援しております。                       久実より』

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』61

    5 ―大事な人―久実二十五歳 赤坂三十一歳赤坂sideアメリカの病院で頑張っている久実を思い浮かべながら、自宅マンションのベランダで缶ビールを喉に流し込んだ。移植が成功したと連絡をもらい、久実の母親からはかなり感謝をされた。少し様子を見て問題なければ日本に戻って来られるという。まだ久実とは話せていない。アメリカまで見舞いに行こうとも考えていたのだが、どうしてもスケジュールが合わずにそれは叶っていない。「はぁ……会いてぇなぁ」自分がこれほどまでに久実を必要としているなど、予想していなかった。いつからだろう。あいつをこんなに愛し始めたのは……。ただの子どもだったのに、こんなにも好きになってしまったんだ。久実の笑顔に癒やされて、励まされて、俺はどんどんと久実を愛していた。芸能界の仕事をしていると、美人は腐るほどいるが久実を超える女はいなかった。帰って来て、久実が退院した時に俺は久実に告白をするつもりでいる。仕事はしまくっていて体がすこしきついが、まあなんとかやっていけそうだ。ぼうっとしてきてそろそろ眠ろうかと思い部屋に入る。すると、スマホが鳴り出した。こんな時間に誰だろう……。「もしもし」『赤坂さん』「……久実?」『あーよかった! 起きてたんだね。時差があってよくわからないけれど……赤坂さん誕生日だよね』明るい声を聞くだけで、俺は泣きそうになった。電話越しだが、久実が生きていることを実感する。『赤坂さん?』「ありがとう」『ううん。何かプレゼントしたいけど、どうしたらいいかわからなくて。でも、おめでとうは言いたかったの』「ああ、すげぇ嬉しいよ」今すぐ抱きしめたい。久実を感じたい……。「元気に過ごしていたのか? 体調はどうだ?」『順調に行けば八月には日本に戻れると思う!』「ああ、待ってる」あと二ヶ月か。会いたい気持ちがどんどん募っていくのだろう。

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』62

       *七月になっていた。スタジオ収録を終えて事務所によると、大樹が休憩室にいた。コーヒーメーカーと冷蔵庫。ソファーにローテーブルがあるだけの狭い部屋だ。「お疲れ様」「おう」大樹の隣に座った俺は、コーヒーを飲んで目を閉じる。「赤坂の好きな子って……心臓病なんだってな」「ああ、美羽ちゃんから聞いた?」「もしかして、妹の舞ちゃんと一緒にライブに来ていた子?」「正解」「移植費用……赤坂が出したのか?」「まあな」「だから、仕事やりまくってたんだな」「当たり前。好きな人の命は俺が守る」「言ってくれたら募金とか、協力したのに」俺は大樹の気持ちはありがたいと思ったが、睨みつける。「もしも、美羽ちゃんが一刻も争う状況だったとしたら。募金なんて呑気なこと言ってられないだろ」「………ごめん。だな」反省したようにうなだれていた。「もう大丈夫だ。移植は成功したから、帰って来るのを待つだけだ」「それはよかった」自分のことのように喜んでくれる大樹のことを俺は大親友だと思っている。運命に導かれて俺たちCOLORは結成したのだ。俺はデビュー前に大澤社長に声をかけられた。ファーストフードのカウンターに座って外を眺めながらぼんやりとハンバーガーを食べていた時だ。ガラス越しに急に俺の前に立ち止まった女性が俺に向かって指をさしてきた。意味がわからなくてきょとんとしていると店内に入り込んできて突然熱く事務所に入らないかと誘ってきたのだ。何かの勧誘かと思って話を聞いていなかったがこの一言が決めてだった。『あなたの人生変えてみない? カラフルな世界を見ることができると思うわよ』まったく知らないもの同士が集められて結成したCOLORだが、今では世界一信頼できる仲間となっている。「付き合ってはいないの?」大樹の質問に俺は情けなくなる。まだ久実は俺の女じゃないのだ。「ああ……。何度か伝えているんだけど……どうしても受け入れてもらえなくてさ」「純愛だな……」「大樹には負けるけど」大樹は笑う。そしてすぐ真面目な視線になった。「告白しないの?」「戻ってきたらするけど。あいつは俺のことどう思ってんのか。ファン以上になりたくないのか、わからないんだよね」俺と久実が恋人になれる日は来るのだろうか。歳の差だってあるし、俺のことをどう思っているのかさっぱりわ

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』63

    八月になり、久実から帰国するとメールが届いた。経過が順調で無事に退院でき日本に戻って来られるそうだ。やっと会えるのだと思うと、嬉しくて何度も繰り返しそのメールを読んだ。日本の病院に入院し、しばらく様子見てから自宅に帰ることになっているそうだが、愛する人の命が延命されたことが何よりも幸せだった。そして、久実が帰国した日に、俺は病院へ向かった。入院していたのは個室で、部屋に入ると顔色がよくなっていて昼ご飯を食べ終えたところだった。「赤坂さん、ただいま!」「お帰り、久実」少しだけふっくらしたように見える。「九月には退院出来るって。少し自宅で体力をつけて、十一月には社会復帰もできるよ。薬を飲み続けなきゃいけないけど、こんなに体が楽になって、夢のよう。全部、赤坂さんのおかげだよ。ありがとう」笑顔を向けてくれる。俺は嬉しくて言葉にならなかった。「じゃあ、十月頃に退院祝いをしよう」「うん、ありがとう」目を合わせて微笑み合うことができる幸せを噛み締める。好きな人と、同じ場所で同じ空気を吸えることが、こんなにも素晴らしいことだと気がつかせてくれた。俺はずっと、久実と生きていきたい。

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』64

    久実side自分の家で、目覚めること。食事をすること。シャワーを浴びること。眠ること。大好きなCOLORの音楽を聞くこと。そして、大好きな人とのディナーに着ていく服を選ぶこと。当たり前のことが幸せだと感じる。それは、一度、死を覚悟したからかもしれない。人生をまっとうした誰かの心臓をもらって、生かしてもらったことに感謝して、一生懸命頑張りたいと思う。二週間前に退院をして自宅で過ごしている。私は、明日のための洋服を選んでいた。いよいよ赤坂さんとディナーの日は明日だ。楽しみで地に足が着かない気分だった。昨日美容室に行って髪の毛を染めた。そして、サラサラのボブにして気分も明るかった。何を着て行こうか。赤坂さんにプレゼントしてもらったネックレスに合うコーディネートをしなきゃ。赤坂さんに可愛いと思ってもらいたい。どんな話をしようかな。ドアのノックが鳴りお母さんが入ってくる。「今、大丈夫?」「うん。どうしたの?」「これ……読ませてもらったんだけど」手に持っていたのは懐かしい封筒だった。手術を受ける前に書いた赤坂さんへの手紙。成功したから渡すことはないと思っていた。……と言うか、忘れていた。ベッドに服を広げていた私を見て悲しそうな顔をするお母さんは、机の椅子に座った。私は手に持っていた服をそっとベッドに置く。そして、カーペットに腰を降ろした。「久実は、赤坂さんのことを男性として好きなの?」「…………うん」こんなにも嬉しそうに服を選んでいる姿を見たらわかりそうなものだけど。なんでそんなことを聞いてくるのだろう。「明日、退院のお祝いをしてくれるんでしょ?」「そうだよ」お母さんは困ったような表情を見せた。「もしもね、赤坂さんが久実に告白してきたとしたら……断りなさい」突然のお母さんの言葉に頭が真っ白になる。思考が追いつかない。「そもそも、告白なんてされてないよ!」この重たい空気を変えたくて私は冗談を言わないでと言った雰囲気で笑った。「赤坂さんはあなたのためにお金をたくさん出しているの。情が移っても不思議な話じゃない。どう考えても久実と赤坂さんは対等じゃないの。わかるわよね? お父さんとも相談したんだけどね、万が一……赤坂さんに交際をしようと言われても絶対に断りなさい」お母さんが本気で言っていることが伝わってきた

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23
  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』65

    赤坂さんとのディナーの日、夕方になって私は家を出た。指定されたホテルへ電車で向かう。白いコートの中に着ているのは、紺のワンピースで裾がふわりと膝丈で揺れている。それにピンクベージュのパンプスを合わせた。赤坂さんに会えるのが久しぶりで素直に嬉しい。だけど、ネックレスはしなかった。お母さんがあんなにも真剣に反対するのだ。心にある『好き』という気持ちがあることが、悪い気がする。ホテルへ到着して名前を告げると部屋番号を教えてもらった。緊張しながら部屋へ向かうと、あまりの広さに足がすくんでしまう。「……な、なにここ」つぶやいた私は奥へ進んでいくとダイニングテーブルセットがある。上質なヨーロッパ家具で揃えられていた。ソファーに座っているが落ち着かない。赤坂さんはまだ来ていなかった。ここに一人でいるなんて心細い。立ち上がって部屋を見て回る。ベッドルームにはキングサイズのベッドが堂々と置かれていた。リビングに戻って窓から景色を見下ろすと、東京の夜景が一望できる。赤坂さんったらまた立派なホテルをチョイスしたようだ。ぼうっと景色を眺めながら考えている。万が一……告白されたら……。断りなさいと真剣な表情で言っていたお母さんの言葉を思い出した。だから、あえて今日は赤坂さんからプレゼントされたネックレスはしてこなかったのだ。「久実」背後から声が聞こえて振り返ると、赤坂さんが立っていた。いつの間に入ってきたのだろうか。気がつかなかった。シャツにジャケットを着ていてスラックス姿の赤坂さんは、テレビでよく見慣れているのだが生で見ると本当にカッコイイ。「遅くなってごめんな」「いえ」「退院おめでとう」「ありがとう」優しい表情が一変。悲しそうな視線を向けてくる。「……ネックレスつけてこなかったんだな」「うん……」「残念だ」私の隣に立って景色を見る赤坂さん。「景色、見てたのか?」「うん。すごく立派なホテルだなーと思って」「記念日くらい、いいホテルにしたいじゃん」おもむろにつぶやいてソファーに座った。記念日って。退院記念日ってことだよね?振り向いて赤坂さんを見る。「どうする? 食事にするか? もう少し後にする?」「あ……うん、お腹減っちゃったかな」「わかった」立ち上がった赤坂さんは電話で食事の準備をお願いしている。どうやら部

    Terakhir Diperbarui : 2025-01-23

Bab terbaru

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章15

    赤坂side「話って何?」俺は、結婚の許可を取るために、大澤社長と二人で完全個室制の居酒屋に来ていた。大澤社長が不思議そうな表情をして俺のことを見ている。COLORは一定のファンは獲得しているが、大樹が結婚したことで離れてしまった人々もいる。人気商売だから仕方がないことではあるが、俺は一人の人間としてあいつに幸せになってもらいたいと思った。それは俺も黒柳も同じこと。愛する人ができたら結婚したいと思うのは普通のことなのだ。しかし立て続けに言われてしまえば社長は頭を抱えてしまうかもしれない。でもいつまでも逃げてるわけにはいかないので俺は勇気を出して口を開いた。「……結婚したいと思っているんだ」「え?」「もう……今すぐにでも結婚したい」唐突に言うと大澤社長は困ったような表情をした。ビールを一口呑んで気持ちを落ち着かせているようにも見える。「大樹が結婚したばかりなのよ。全員が結婚してしまったらアイドルなんて続けていけないと思う」「わかってる」だからといっていつまでも久実を待たせておくわけにはいかないのだ。俺たちの仕事は応援してくれるファンがいて成り立つものであるけれど、何を差し置いても一人の女性を愛していきたいと思ってしまった。「解散したとするじゃない? そうしたらあなたたちはどうやって食べていくの? 好きな女性を守るためには仕事をしていかなきゃいけないのよ」「……」社長の言う通りだ。かなりの貯金はあるが、仕事は続けていかなければならない。俺に仕事がなければ久実の両親も心配するだろう。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章14

    司会は事務所のアナウンス部所属の方のようだ。明るい声で話し方が柔らかいいい感じの司会だ。美羽さんと紫藤さんがゆっくりと入場してきた。真っ白なふわふわのレースのウエディングドレスを着た美羽さんはとても可愛らしい。髪の毛も綺麗に結われていて、頭には小さなティアラが乗っかっている。二人は本当に幸せそうに輝いている笑顔を浮かべていた。きっと過去に辛いことがあって乗り越えてきたから今はこうしてあるのだろう。二人が新郎新婦の席に到着すると、紫藤さんが挨拶をした。「皆さんお集まりくださりありがとうございます。本当に仲のいい人しか呼んでいません。気軽な気持ちで食事をして行ってください」結婚パーティーではプロのアーティストだったり、芸人さんがお笑いネタをやってくれたりととても面白かった。自由時間になると、美羽さんが近づいてきてくれる。「久実ちゃん、今日は来てくれてありがとう」「ウエディングドレスとても似合っています」「ありがとう。また今度ゆっくり遊びに来てね」「はい! お腹大事にしてください」「ええ、ありがとう」美羽さんのお腹の赤ちゃんは順調に育っているようだ。早く赤ちゃんが生まれてくるといいなと願っている。美羽さんと紫藤さんは辛い思いをたくさんしてきたらしいので、心から幸せになってほしいと思っていた。アルコールを楽しんでいる赤坂さんに目を向ける。事務所が私との結婚を許してくれたらいいな。でも、たくさんファンがいるだろうから、悲しませてしまわないだろうかと考えてしまう。落ち込んでしまうけど、希望を捨ててはいけない。必ず大好きな人と幸せになりたいと心から願っている。そして今まで支えてくれたファンの方たちにも何か恩返しができればと思っていた。私が直接何かをすることはできないけれど陰ながら応援していきたい。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章13

    ◆今日は美羽さんと、紫藤さんの結婚パーティーだ。レストランを借り切って親しい人だけを選んでパーティーをするらしく、そこに私を呼んでくれたのだ。ほとんど会ったことがないのにいつも優しくしてくれる美羽さん。忙しいのにメッセージを送るといつも暖かく返事をしてくれる。そんな彼女の大切な日に呼んでもらえたのが嬉しくてたまらなかった。私は薄い水色のドレスを着てレストランへと向かった。会場に到着して席に座ると、私の隣に赤坂さんが座った。「おう」「……こ、こんにちは」「なんでそんなに他人行儀なの?」ムッとした表情をされる。赤坂さんと結婚の約束をしたなんて信じられなくて、今でも夢かと思ってしまう。「なんだか……私たちも婚約しているなんて信じられなくて」「残念ながら本当だ」「残念なんかじゃないよ。すごく嬉しい」赤坂さんはにっこりと笑ってくれた。そしてテーブルの下で手をぎゅっと握ってくれる。誰かに見られたらどうしようと思いながらドキドキしつつも嬉しくて泣きそうだった。「少し待たせてしまうかもしれないけど俺たちももう少しだから頑張ろうな」「うん」大好きな気持ちが胸の中でどんどんと膨らんでいく。こんなに好きになっても大丈夫なのだろうか。小さな声で会話をしていると会場が暗くなった。そしてバイオリンの音楽が響いた。『新郎新婦の入場です』

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章12

    「病弱でいつまで生きられるかわからなくて。私たち夫婦のかけがえのない娘だった。その娘を真剣に愛してくれる男性に出会えたのだから、光栄なことはだと思うわ」お母さんの言葉をお父さんは噛みしめるように聞いていた。そして座り直して真っ直ぐ赤坂さんを見つめた。「赤坂さん。うちの娘を幸せにしてやってください」私のためにお父さんが頭を深く深く下げてくれた。赤坂さんも背筋を正して頭を下げる。「わかりました。絶対に幸せにします」結婚を認めてくれたことが嬉しくて、私は耐えきれなくて涙があふれてくる。赤坂さんがそっとハンカチを手渡してくれた。「これから事務所の許可を得ます。その後に結婚ということになるので、今すぐには難しいかもしれませんが、見守ってくだされば幸いです」赤坂さんはこれから大変になっていく。私も同じ気持ちで彼を支えていかなければ。「わかりました。何かと大変だと思いますが私たちはあなたたちを応援します」お母さんがはっきりした口調で言ってくれた。「ありがとうございます」「さ、お茶でも飲んでゆっくりしててください。今日はお仕事ないんですか?」「はい」私も赤坂さんも安心して心から笑顔になることができた。家族になるために頑張ろう。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章11

    「突然押しかけてしまって本当に申し訳ありません」赤坂さんが頭を下げると、お父さんは不機嫌そうに腕を組んだ。赤坂さんは私の命を救ってくれた本当の恩人だ。お父さんもそれはわかっているけれど、どうしても芸能人との結婚は許せないのだろう。赤坂さんが私のことを本気で愛してくれているのは、伝わってきている。私の隣で緊張しておかしくなってしまいそうな雰囲気が伝わってきた。「お父さん、お母さん」真剣な声音で赤坂さんはお父さんとお母さんのことを呼ぶ。お父さんとお母さんは赤坂さんのことを真剣に見つめる。「お父さん、お母さん。お嬢さんと結婚させてください」はっきりとした口調で言う姿が凛々しくてかっこいい。まるでドラマのワンシーンを見ているかのようだった。「お願い、赤坂さんと結婚させて」「芸能人と結婚したって大変な思いをするに決まっている。今は一時的に感情が盛り上がっているだけだ」部屋の空気が悪くなると、お母さんがそっと口を開いた。「そうかしら。赤坂さんはずっと久実のことを支えてくれていたわ。こんなにも長い間一緒にいてくれる人っていない。芸能人という特別な立場なのに、本当に愛してくれているのだと感じるの。だから……お母さんは結婚に賛成したい」お母さんの言葉にお父さんはハッとしている。私と赤坂さんも驚いて目を丸くした。お母さんはお父さんの背中をそっと撫でる。「あなたが久実のことを本当に大事に思っているのは一番わかるわ。可愛くて仕方がないのよね」「……あぁ」父親の心が伝わり泣きそうになる。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章10

    慌ててインターホンの画面を覗くと、宅急便だった。はぁ、びっくりさせないでほしい。ほっとしているが、残念な感情が込み上げてくる。どこかで赤坂さんに来てほしいという気持ちもあるのかもしれない。ちょっとだけ、寂しいなと思ってしまう。私は赤坂さんと結婚するのは夢のまた夢なのだろうか。お母さんが言っていたように二番目に好きな人と結婚しろと言われても、二番目に好きな人なんてできないと思う。ぼんやりと考えているとふたたびチャイムが鳴った。お母さんがインターホンのモニターを覗くと固まっている。その様子からして私は今度こそ本当に本当なのではないかと思った。「……あなた。赤坂さんがいらしたんだけど」「なんだって」部屋の空気が一気に変わった。私は一気に緊張してしまい、唇が乾いていく。赤坂さんが本当に日曜日に襲撃してくるなんて思ってもいなかった。冗談だと思っていたのに、来てくれるなんてそれだけ本気で考えてくれているのかもしれない。「久実、お父さんとお母さんのことを騙そうとしていたのか」「違うの。赤坂さんお部屋に入れてあげて。パパラッチに撮られたら大変なことになってしまうから」お父さんとお母さんは仕方がないと言った表情をすると、オートロックを解除した。数分後赤坂さんが部屋の中に入ってくる。今日はスーツを着ていつもと雰囲気が違っている。手土産なんか持ってきちゃったりして、芸能人という感じがしない。松葉杖を使わなくても歩けるようになったようだ。テーブルを挟んでお父さんとお母さん向かい側に私と赤坂さんが並んで座った。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章9

    家に戻り、落ち着いたところで携帯を見るが久実からの連絡はない。もしかしたら、両親に会える許可が取れたかと期待をしていたが、そう簡単にはいかなさそうだ。久実を大事に育ててきたからこそ、認めたくない気持ちもわかる。俺は安定しない仕事だし。でも、俺も諦められたい。絶対に久実と結婚したい。日曜日、怖くて不安だったが挨拶に行こうと決意を深くしたのだった。久実side日曜日になった。朝から、赤坂さんが来ないかと内心ドキドキしている。今日に限って、お父さんもお母さんも家にいるのだ。万が一来たらどうしよう。いや、まさか来ないよね。……いやいや、赤坂さんならありえる。私は顔は冷静だが心の中は忙しなかった。もし来たら修羅場になりそう。想像すると恐ろしくなって両親を出かけさせようと考える。お父さんは新聞を広げてくつろいでいる。「お父さん、どこか、行かないの?」「なんでだ」「い、いや、別に……アハハハ」笑ってごまかすが、怪しまれている。大丈夫だよね。赤坂さんが来るはずない。忙しそうだし、いつものジョークだろう。でも、ちゃんとお父さんに会ってもらわないと。赤坂さんと、ずっと、一緒にいたい。ランチを終えて食器を台所に片付けに行くと、チャイムが鳴った。も、もしかして。本当に来ちゃったの?

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章8

    久実を愛しすぎて、彼女のウエディングドレス姿ばかり、想像する日々だ。世界一似合うと思う。純白もいいし、カラードレスも作りたい。もちろん結婚がゴールではないし結婚後の生活が大事になってくる。つらいことも楽しいことも人生には色々あると思うが彼女となら絶対に乗り越えて行ける自信があった。ただ……俺も黒柳も結婚をすると、COLORは解散する運命かもしれない。三人とも既婚者のアイドルなんてありえないよな。大事なCOLORだ。ずっと三人でやってきた。大樹だけ結婚をして幸せに過ごしているなんて不公平だと思う。あいつが辛い思いをしてきて今があるというのは十分に理解しているから、祝福はしているが、俺だって愛する人と幸せになりたい。グループの中で一人だけが結婚するというのはどうしても腑に落ちなかった。だから近いうちに事務所の社長には結婚したいということを伝えるつもりでいる。でもそうなるとやっぱり解散という文字が頭の中を支配していた。解散をしても、俺は久実を養う責任がある。仕事がなくなってしまったら俺は久実を守り抜くことができるのだろうか。不安もあるが、久実がそばにいてくれたら、どんな困難も乗り越えられると信じていたし、絶対に守っていくという決意もしている。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章7

    赤坂side音楽番組の収録を終えた。楽屋に戻ると、大樹は美羽さんに連絡をしている。「終わったよ。これから帰るから。体調はどうだ?」堂々と好きな人とやり取りできるのが、羨ましい。俺は、久美の親に結婚を反対されているっつーのに。腹立つ。会うことすら許してもらえない。大きなため息が出てしまう。私服に着替えながらも、久実のことを考える。久実を幸せにできる男は、俺だけだ。というか、どんなことがあっても離さない。俺は久美がいないと……もう、生きていけない。心から愛している。どんな若くて綺麗なアイドルなんかよりも、世界一、久実が好きだ。どうして、久実のご両親はこんなにも反対するのか。俺に大切な娘を預けるのは心もとないのだろうか。なんとしても、久実との交際や結婚を認めてほしい。一生、久実と生きていきたいと思っている。俺のこの真剣な気持ちが伝わればいいのに……。日曜日に実家まで押しかけるつもりでいた。 強制的に動かなければいけない時期に差し掛かってきている。 苛立ちを流し込むように、ペットボトルの水を一気飲みした。「ご機嫌斜め?」黒柳が顔を覗き込んでくる。「別に!」「スマイルだよ。笑わないと福は訪れないよ」「わかってる」クスクス笑って、黒柳は楽屋を出て行く。俺も帰ろう。「お疲れ」楽屋を出てエレベーターに乗る。セキュリティを超えて ドアを出るとタクシーで帰る。一人の女性をこんなにも愛してしまうなんて予想していなかった。自分の人生の物の見方や思考を変えてくれたのは、間違いなく久実だ。きっと彼女に出会っていなければ、ろくでもない人生を送っていたに違いない。

Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status